僕は昔から食事の時間が大好きである。
美味しい料理、家族の会話、リラックスした時間、どれも日常生活のリズムとメンタルを整えるためには欠かせない。
僕の実家は朝、晩と家族全員で食事を取るのが習慣で、自分の家庭を持った今も出張の時以外はなるべく家族と食卓を囲みたいと思っている。
我が家のダイニングで使っているRene Gabriel(ルネ・ガブリエル)というデザイナーの椅子。
テーブルの方はまた今度にとっておくとして、今回はその椅子の話をしようと思う。

自宅のダイニングスペースは、設計してもらう中でリビングの中心に配置してもらっている。
食事を楽しむのはもちろん、PCで作業をしたり、コーヒーを飲んだり、子供が宿題をしたりと生活の中心になるからだ。
リビングの1番目立つ場所、そして使用頻度が高いからこそ、リラックスしすぎるのではなくある程度「緊張感」があって「端正な美しさ」があるセッティングにしたいと考えていた。
かつては「気に入った椅子をあえてバラバラに揃えてダイニングで使う」というよくある手法をとっていて、それはそれでリズムがあって面白かったが、今回は「リビングの顔」ということできちんと同じ物で揃えることに決めたのである。
そうと決まればどんな組み合わせにするかが問題だ。
「端正」という条件や部屋がリビングが狭いこともありあまりゴツい椅子は似合わないので、繊細すぎず大雑把すぎずな華奢な椅子を探すことにした。
色々な本や雑誌、古いものから新しいものまで比較検討した結果、最終的に採用したのがこのルネ・ガブリエルの椅子である。
少し彼に関して触れておくと、彼はフランス人のデザイナーで、いわゆるフレンチミッドセンチュリーと呼ばれる時代の礎を作った人物。少し家具が好きな人であれば「フレンチミッドセンチュリー」と聞くと最も有名なところで言えばシャルロット・ペリアンや最近日本で大きな回顧展が行われたジャン・プルーヴェなどが思い浮かぶと思う。

さて、この椅子は「mobilier d’urgence”「応急の家具」と呼ばれているシリーズで、デザインされた目的はとても「経済的」である。
第二次世界大戦中、イギリス海軍の空襲を受け退廃したフランスの都市、ル・アーヴル。そこの復興計画のために作られたのがこの椅子で、いち早く復興を成し遂げるために不要な装飾は排除され、生産のしやすさとコストの安さを意識してデザインされたものだ。
シンプルだが椅子としての機能は損なわず、背面のカーブが美しい佇まいにはどこか荒々しさも残っており、製造当時の時代背景をほのかに感じ取ることができる。
座り心地はものすごく良いとは言えないが、特に食事の際などはリラックスしてだらけ過ぎない、少しの「緊張感」が個人的に好きなバランスだ。
全く異なるシェーカー教という背景と緊張感をもつボーエ・モーエンセンのダイニングテーブルとの相性も素晴らしい。やはり産地やデザイナーが違っていても、共通項があると相性がピタッとハマる。
こうして毎日使うと豊かでシャキッとした気持ちになる我が家のダイニングが完成した。
自堕落な僕を毎日律してくれる、欠かせない存在である。
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